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空と星

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空と星
海底を泳ぐアンコウはある日とても不思議な魚のうわさを聞きました。
「この海のずっと上のほうには空を飛ぶ魚がいるらしい」
自分は日の光も届かない海の底をゆっくりと泳ぐことしかできないのに、空を飛ぶ魚がいるなんて。アンコウはその魚をとてもうらやましく思いました。僕も少しでいいから空を飛んでみたい。その魚に会えたら空の飛び方を教えてもらえるかもしれない。「空を飛ぶ魚に会いに行こう」
アンコウはずっと上の海を目指して泳ぎ始めました。ゆっくりと何日もかけて、ようやく海上に出ました。アンコウにとっては初めての空です。「空って海よりも広いんだなぁ」
アンコウが空を眺めているとビューンとすごい速さで鳥が横切りました。いえ、鳥ではありません、魚です。アンコウはあわてて呼び止めます。「おおい、待ってくれぇ」
トビウオは急ブレーキ。「おいらに何か用かい?」アンコウが口を開こうとしたその時、「あ、あんたはもしかして星を持つ魚じゃないかい?」
トビウオはとてもうれしそうに話します。「夜空を飛んでいると、もっとずっと上の空にきれいな星がたくさん見えるんだ。とっても高いところにあるからおいらがどんなに飛んでも絶対に届かないんだ。でも聞いたことがあるんだよ。この海のずっと底のほうには星を持つ魚がいるらしいって」
トビウオは熱心にアンコウに頼みました。どうやって星を手に入れたか教えてほしい。アンコウは困ってしまいました。頭のちょうちんは気が付いたら光るようになっていたので説明のしようがありません。「ごめんよ」
トビウオは言いました。「あんたがとてもうらやましいよ。とても素敵な星を持っているんだから」
トビウオは飛んでいきました。アンコウは飛び方を聞きそびれてしまいました。アンコウは来た時よりもゆっくりと海の底へ帰っていきました。
55/100の小さな作り話



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